すずめや商店

映像業界の片隅で生きる女・すずめを彩るものたち

【映画】3月のライオン(前編)~生きるために闘う~

人生をかけた者同士がぶつかり合う緊迫感

※【ネタバレなし】レビュー記事ですが公式HP以上のネタバレはありません

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概要

原作「3月のライオン

 連載10年を経て、年代性別問わず愛される大ヒットコミック。
著者は「はちみつとクローバー」でも有名な羽海野チカ
それぞれの人生を背負った棋士たち、残酷な運命から解き放たれない家族、主人公・17歳のプロ棋士 零(れい)応援する周りの人々・・・。
魅力あふれるキャラクターの熱い思いと温かい気持ち、悲しい涙が交錯する、胸が苦しくなるストーリー。数々の賞を受賞した注目の原作。

スタッフ・キャスト

監督を務めたのは「るろうに剣心」シリーズの大友啓史。
主役はもはや説明の必要もない、若手役者の中でも目を見張る存在の神木隆之介
脇を固めるのは棋士に、佐々木蔵之介伊藤英明豊川悦司染谷将太
陰ながら心の支えとなってくれる高校の先生という大事なポジションには、今注目の高橋一生
他、新鋭からベテランまで豪華キャストが集結。

感想

前編が終了して、想像以上に対局の緊張感をじっくりと味わうことができたことに驚いた。
張り詰めていた緊迫感から解き放されてはじめて、いつの間にかどっぷりと映画の世界観に引き込まれていたことに気がついた。
それほどまでに自然に物語に入り込めたのは、まずひとつ脚本にあると思う。たくさんの魅力ある原作の要素を、欲張らず、必要かつベストな ものだけを残し、限界までシンプルにして、10年分のシナリオを活かしきったものになっていたのではないか。
参考までに、私は原作は読んでいないのだが、アニメは見ていた。
だから映画(前編)では少ししか見られなかった「3姉妹や先生、二階堂・・その他キャラクターの”もっと溢れるもの”」を知っているつもりでいるが、映画だけを見ても彼らの魅力は十二分に伝わってきた。

その勝因の2つ目にキャストの力を挙げたい。
ふくふくとした染谷将太(私はエンドロールまで誰だか気づかなかった)演じる二階堂。彼もまた人生をかけて闘う棋士の一人だが、明るさとユーモアに隠した「生きるための将棋」という熱さを見事に表現している。元からふくふくしている俳優だっている中、特殊メイクをしてまで彼を起用した、その発想に感動する。改めて彼のふり幅の広さに心つかまれた。
私の中で意外だったのは有村架純だ。演じるのは凛として鋭い棘のような「義理の姉」。童顔で柔らかい印象の有村にあまり期待を寄せていなかったのだ。しかし、将棋の家に生まれた運命と耐えがたい現実の中、自分でもどうしてよいかわからない感情に翻弄される女性の「鋭さともろさの両立」に、彼女の魅力を見た。
映画では短い尺となったが、高橋一生演じる高校の先生は、確かな存在感と押し付けすぎないのに重みのある台詞を添えて、作品をさらに深み有るものへとしてくれた。
そんな魅力ある俳優陣の中、安定の神木隆之介。プロ棋士、だけど、壊れそうで押しつぶされそうな等身大の17歳。演技とは思えない、ドキュメンタリーを見ているような、零の感情が直接心へ入ってくるような、不純物のない、そんな言葉は意味を持たないくらい、やはり圧倒的でした。

冒頭にも述べたが、ともすればストーリーを追いかけるだけで精いっぱいになりそうなボリュームあるシナリオを、まさに「将棋」に、「勝負」に重きを置いた演出で描いた大友監督に拍手を送りたい。
一歩間違えれば唐突にも思えるような場面もいくつかあったが、リアリティとフィクションの狭間の絶妙な部分を狙って捉えている。
贅沢なものを削ぎ落として削ぎ落として、真ん中に残った一番おいしい部分、という表現をしたくなる、素晴らしい作品だった。

個人的にはあかりさんに期待した包容力が、倉科カナに足りなかったかなと残念ではあるが、後半に期待したい。

 

後編の公開は4/22(土)から。

 

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